「どんなゲームにしたいか、企画の方向性は決まった。でも、具体的なルールの作り方がわからない……」
「メカニクスとか専門用語を知らないと、ゲームって作れないの?」
「テストプレイって、最初から綺麗なカードを用意しなきゃダメ?」

そんな壁にぶつかり、手が止まっているあなたへ。
この記事では、未経験の素人チームだった「あおときばこ」が、頭の中のフワッとしたアイデアをどうやって実際の「遊べるルール」へと落とし込んでいったのか、その泥臭いプロセスを包み隠さず公開します。

私たちは最終的に3つのボードゲームを世に出すことができましたが、最初は右も左も分からないド素人でした。
結論から言うと、初期の2作(『マトリョーシカポーカー』『王様レストラン』)の基礎を生み出す過程で、私たちはなんと「17個」ものルール案を出してはテストプレイでぶっ壊し、最終的に生き残った「たった1個」のルールを世に出すという途方もない遠回りをしました。
なぜ、そんなやり方しかできなかったのか? 専門用語ゼロ、圧倒的なスピードと「一番安い紙とペン」だけで駆け抜けた、初心者のための超・現実的なルール設計とテストプレイの裏側をお伝えします。読めば今日から、あなたのテストプレイが始動するはずです。
ボドゲの「型」を知らない初心者の戦い方:17案出して1案を削り出す

「ルールを作るには、まず『メカニクス(トリックテイキング、ワーカープレイスメントなどの既存の型)』を勉強しなければいけないのかな……」と悩んでいませんか?
正直にお伝えします。結論から言えば、メカニクス(既存の型)は絶対に勉強した方がいいです。 先人たちが洗練させてきた「面白さを生み出すフォーマット」を知っていれば、圧倒的なショートカットになるからです。
しかし、当時の私たち「あおときばこ」のメンバーは、そんな専門用語を一つも知りませんでした。真っ白なキャンバスから完全にゼロベースでルールを作ろうとしたのです。今思えば、わざわざ「車輪の再発明」をしようとする、とんでもない愚行でした。

既存の「型」という頼れる杖がないため、思いついたアイデアがゲームとして成立するのか、頭の中でいくら考えても分かりません。 だからこそ、知識を持たない素人の私たちが取るべき生存戦略は、「とにかく思いついたルールを全部出して、片っ端から試す」という、極めて脳筋で泥臭い戦法しかありませんでした。
「こんなルールを入れたら面白いんじゃない?」と思い立ったら即座にテストし、実際に私たちが回したルールの数はなんと17個。 しかし、大半は遊んでみると「すぐ終わってしまう」「途中で誰が勝つか分かって消化試合になる」など、見事に撃沈していきました。17個のアイデアのうち、最終的に生き残り、私たちのゲームの核となったのはたったの「1個」です。
ものすごい時間を溶かす途方もない遠回りでした。しかし、メカニクスを知らなかったからこそ、私たちは複雑な指標に頼らず、「ゲームとして破綻していないか」と「やってみて面白いか」という2つの直感と本質のみで、16個のルールを切り捨てるしかありませんでした。結果として、この泥臭い削り出しの経験が、私たちのゲームの「芯」を強固なものにしてくれたのです。
理想は、知識をつけること。でも、もし今「知識がないから」という理由であなたの手が止まっているなら、無理に勉強から始める必要はありません。 私たちのように、質より量の数稽古で強行突破する道もあります。知識不足を理由に、ゲーム作りを諦めないでください。
この修正により、本来のスタンスと読者へのメッセージが両立できたと考えます。このニュアンスをベースに、残りのセクションも出力してよろしいでしょうか?
画期的なアイデアが浮かばない? 身近な名作から「体験」を抽出しよう
「とにかく数を出せと言われても、そもそもゼロから斬新なシステムなんて思いつかない……」と悩む方も多いでしょう。
安心してください。ゼロから新しいものを生み出す必要はありません。あなたが好きな「身近な名作エンタメ」から、一番面白い瞬間の感情(体験)だけを抽出するのです。
マトリョーシカポーカー

例えば、私たちの処女作である『マトリョーシカポーカー』。 このゲームの着想は、「チームの3人ともポーカーが好き」という極めてシンプルな共通点からスタートしています。
ポーカーには心理戦やベッティングなど様々な醍醐味がありますが、私たちが特に目を付けたのは「ポジション(座る位置・順番)」と「手札」でした。
「相手より後に行動できるポジションの有利さと、配られた手札でどう戦うか。じゃあ、その手札を『たった1枚』にまで極限圧縮してやってみたら、どうなる?」
これがマトリョーシカポーカーの原点です。「自分にとって有利になる要素は何か?」をギリギリのヒリつきの中で考える、あの独特のプレイ感はこうして生まれました。
王様レストラン

もう一つの作品『王様レストラン』の着想源は、国民的ゲームの『桃太郎電鉄』です。 桃鉄で一番盛り上がる(そして友情が破壊されそうになる)瞬間といえば、「圧倒的1位のプレイヤーの足を、みんなで全力で引っ張るあの理不尽な面白さ」ですよね。
「あの体験をボドゲで再現したい!」と考えた私たちは、とにかく「1位にヘイトが集中する」ルールを設計しました。トップを走っていると全員から狙われるため、「1位になるのが怖い。でも、1位になったらなんとか逃げ切りたい」というジレンマが生まれます。
難しい専門用語を知らなくても、「あのゲームの、あの瞬間の感情」を言語化できれば、それは立派なボードゲームのルールになるのです。
コンポーネント作りに迷ったら? 世界観を捨てて「紙とペン」で最速テスト

アイデアが出たら、次は実際に遊んでみる「テストプレイ」です。ここで初心者が陥りがちなのが「最初からある程度ちゃんとしたカードやコマを用意しなきゃダメ(恥ずかしい)」という完璧主義です。
断言します。初期のテストプレイにおいて、世界観や見た目の綺麗さは一切捨ててください。1分でやり直せる「一番安い紙とペン」こそが最強のツールです。

もちろん、世界観やプレイヤーの体験から逆算して、美しいプロトタイプを組み上げる手法もあります。後になって他サークルさん(ムーブさんや、HoFgamesさんなど)と交流を持った際、彼らがプロトタイプの段階からしっかりとしたコンポーネントを作り込んでいるのを見て、心底驚愕したのを覚えています。
しかし、プロや熟練者がそれを行えるのは「最初からある程度の完成度が見えているから」です。 17個試して16個が即座にゴミ箱行きになるような未経験の私たちが、最初から綺麗に作っても5分後にはルールが破綻して無駄になります。未経験者は見栄を張っている場合ではありません。
思い立ったらその場でコピー用紙やルーズリーフをちぎり、ボールペンで適当な数字や文字を書き殴るだけ。わずか1分後にはテストプレイが開始できる。この「圧倒的なスピードと安さ」こそが、素人が数稽古をこなすための最大の武器になります。
テストプレイのダメ出しが怖い? 凹まずに作品を磨くメンタル術

「紙とペンでテストプレイを始める重要性はわかった。でも、友達やメンバーから『これ、全然面白くないね』と言われるのが怖い……」
自分で一生懸命考えたアイデアだからこそ、否定されると人格まで否定されたような気がして心が折れてしまう。これは、モノづくりをする人なら誰もがぶつかる壁です。
しかし、テストプレイは「あなたのアイデアの発表会」ではありません。「目の前にある欠陥品を、どうやったらマシにできるかを探るための解剖実験」です。
私たち「あおときばこ」のテストプレイでは、シビアな意見が出て空気が凍ることは一度もありませんでした。なぜなら、根底に「自分たちはド素人なんだから、最初から面白いものが作れるわけがない(つまらなくて当たり前)」という潔い割り切りがあったからです。
私たちはチーム内で、以下のような論理的なスタンスを徹底していました。

- ルールへの質問が来た時: それはプレイヤーの理解が追いついていない(説明不足・直感的に分かりにくい)証拠なので、素直に答えてルールの見せ方を改善する。
- 「ここがつまらない」「破綻している」と指摘された時: 感情的にならず、「じゃあ、どう変えれば面白くなるか?」という解決策の模索にだけフォーカスする。
ダメ出しに恐怖を感じているなら、まずは「最初はつまらなくて当たり前。これは批判ではなく改善の場なんだ」と、一緒に遊んでくれる人に宣言してから始めてみてください。肩の荷がスッと下りるはずです。
プレイ人数による微調整が命!紙とペンから生まれた絶妙なバランス

17案の中から「ゲームとして破綻しておらず、面白い!」と思えるたった1つのルール(原石)を見つけ出したら、次はいよいよ「数字の微調整(バランス調整)」に入ります。
「遊んでみて違和感があった時、面白くするために複雑な新ルールを足してしまう」という失敗は初心者あるあるですが、修正は「足し算」ではなく「微調整」で行うのが鉄則です。ここでも、紙とペンによる超高速な反復テストが牙を剥きます。

私たちが『マトリョーシカポーカー』の大枠を固めた後、最も時間を割いたのが「プレイ人数によるプレイ感の違い」をどう埋めるかという検証でした。
「4人で遊ぶとめちゃくちゃ面白いのに、5人以上で遊ぶと急に運要素が強くなって大味になってしまう……」
そこで私たちは、手元の紙に書かれた数字やカードの枚数を何度も書き直し、シミュレーションを繰り返しました。そして行き着いたのが、次のようなルールの微調整です。
- 【4人以下で遊ぶ場合】 真ん中にカードを1枚置いてプレイする
- 【5人以上で遊ぶ場合】 真ん中にはカードを置かずにプレイする
たったこれだけのことですが、この微調整を入れた瞬間、何人で遊んでもギリギリのヒリつきが味わえる「絶妙なバランス」へと化けたのです。 奇をてらったギミックを足すのではなく、テストプレイの中で見つけた違和感を、最もシンプル(普通)なルール変更で解決する。
この結論は、頭の中でウンウンと悩んでいても絶対に出ませんでした。紙とペンで何十回も回し、「本当にその数字でいいのか?」と検証し続けたからこそ辿り着けた、泥臭い汗の結晶です。
まとめ:完璧を目指さず、まずは手元の紙をちぎって遊んでみよう

知識ゼロの素人チームが、どうやってボードゲームのルールを作り上げたのか。その泥臭いテストプレイの裏側をお話ししました。
- メカニクスの勉強は不要。質より量で17案出して16案捨てる覚悟を持つ。
- ゼロから生み出さず、好きなエンタメから「感情」だけを抽出する。
- 未経験者は見栄を張らず、1分でやり直せる「紙とペン」で最速テストする。
- ダメ出しに凹まない。「つまらなくて当たり前」の解剖実験と割り切る。
- バランス調整は足し算ではなく、シンプルな微調整で行う。

「画期的なルールを思いついてから」「綺麗なコンポーネントができてから」と完璧を目指すと、いつまで経ってもあなたのゲームは完成しません。 最初から名作なんて作れません。私たちのように遠回りをしてもいいんです。
もし今、あなたの頭の中に少しでも「こんなゲーム面白そうだな」という種があるのなら。今すぐ目の前にあるコピー用紙をビリビリに破いて、ペンで数字を書き込み、誰かを捕まえて遊んでみてください。すべては、その「適当な紙切れ」から始まります。
ルールの土台ができあがったら、次はいよいよ、あえて後回しにしていた「世界観」という強烈な衣をまとわせるフェーズに入ります。 次回、第4回「世界観の構築とアートワーク・UIデザイン」でお会いしましょう!お楽しみに!

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