メカニクスを知らなくても完売できる?素人チームが実践した「神ゲー」の条件と企画法

制作ログ

「いざ自分たちでボードゲームを作ろう!」と決意したものの、真っ白なノートを前にフリーズしていませんか?

 

「どんなシステムがいいんだろう…」

「トリックテイキング?ワーカープレイスメント?なんだか難しそうな専門用語ばかりで、自分には画期的なアイデアなんて出せる気がしない」

 

かつての私たち「あおときばこ」も、まさにこの状態でした。世にある名作ボードゲームを片っ端から研究し、複雑なシステムを理解しなければ「売れるゲーム」は作れないと思い込んでいたのです。

 

しかし、結論から言います。ボードゲームの専門知識がゼロでも、面白いゲームの企画は作れます。 前回お話しした通り、未経験の素人チームだった私たちは、処女作『マトリョーシカポーカー』をゲームマーケットで完売させることができました。

 

その企画の源泉は、既存のボドゲ研究ではありません。私たちが普段楽しんでいる日常のエンタメ(スマホゲーム、YouTube、スポーツ観戦など)にゴロゴロ転がっている「面白さの本質」をパクる……もとい、抽出することでした。 今回は、私たちが日常のエンタメから導き出し、実際のボドゲ企画に落とし込んだ「3つの法則」と、最後に待ち受けていた「知らなきゃ大損する強烈な教訓」を大公開します。

 

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ボドゲの知識ゼロでも大丈夫。「売れるゲーム」のヒントは日常に転がっている

ボードゲームを作ろうとすると、どうしても「他のボドゲ」からインスピレーションを得ようとしてしまいます。しかし、知識ゼロの私たちがそれをやると、単なる「有名ゲームの劣化版」にしかなりません。

そこで私たちは発想を変えました。「自分たちが最近ハマったエンタメの、何がそんなに面白かったのか?」を徹底的に言語化し、それをボドゲのシステムに転用することにしたのです。

 

「Mリーグ」に学ぶ!未経験者を巻き込むターゲティングの魔法

ゲームを作る際、無意識のうちに「ボドゲに詳しい人(ゲーマー)」をターゲットにしてしまいがちです。しかし、私たちがターゲティングのヒントにしたのは、麻雀のプロリーグである「Mリーグ」でした。

 

麻雀といえば、ルールが複雑で専門用語も多く、本来は非常にハードルが高い競技です。しかし、チーム会議の中でメンバーの「きのこ」が熱っぽく語った分析は、私たちの固定観念を壊しました。

 

「最近Mリーグにめちゃくちゃハマってるんだけど、元々は瑞原明奈プロが可愛くて見始めたんだよね。今では他の選手もみんな好き。 何がすごいって、ファンの中には『麻雀のルールを全く知らない』『牌にすら触れたことがない』って人がたくさんいること。競技自体の面白さだけじゃなくて、プロ達自身のキャラクターを売りに出せているのが本当にすごい」

 

この視点は、私たちのターゲティングに革命を起こしました。

「複雑なルール」を理解できなくても、「人(キャラクター)の魅力」があれば未経験者は熱狂できる。これはボドゲも同じです。

「ボドゲ好き」だけを狙う必要はありません。プレイヤー同士の会話が弾んだり、プレイヤー自身の意外な一面が引き出されたりする構造を作れば、普段ボードゲームをやらない層(初心者)も巻き込める強力なコンテンツになるのだと気づかされました。

 

ボドゲ愛好家の共通課題「インストの壁」を壊す。スマホアプリ「2048」の衝撃

さて、ボードゲームを愛する皆さんなら、絶対に首を縦に振ってくれる強烈な悩みがありますよね。

そう、「初めてのボードゲームを遊ぶときのインスト(ルール説明)、めちゃくちゃ難しすぎる問題」です。

 

一生懸命説明しているのに、初心者の友人の目がどんどん死んでいくあの恐怖。

インストの1分過ぎたあたりで、「あ、これ今日楽しんでもらえないかも」と悟る絶望感。

 

初心者を巻き込むためには、入り口のハードルを極限まで下げる必要があります。

そこでヒントになったのが、当時きのこが今更ドハマりしていた大ヒットスマホアプリ「2048」です。

「2048って、同じ数字のブロックをスワイプしてくっつけて倍にするだけ。ルールはめちゃくちゃ簡単なんだけど、やってみると意外と難しくて奥が深い。パズドラとかもそうだけど、やっぱりシンプルで奥深いゲームって流行るんだよね」

 

これはアナログなボードゲームにも完全に当てはまります。

「説明は1分で終わる」「直感的に何をすればいいか分かる」、なのに「勝つためには頭を悩ませる奥深さがある」。

この「ルールのシンプルさと戦略の奥深さの両立」こそが、インストの壁をぶっ壊し、万人に愛されるゲームデザインの絶対条件としてチームの共通言語になりました。

 

TRPG『カタシロ』が教えてくれた「個性が見えるゲームは神ゲー」の法則

極めつけは、メンバーの「おくら」が熱狂していたTRPG(テーブルトークRPG)のシナリオ『カタシロ』からの気づきでした。

通常のRPGは「自分とは別のキャラクター」になりきってプレイしますが、『カタシロ』は違ったそうです。

「役は『自分』なんだよね。自分の考え方や価値観で進んでいいシナリオだから、プレイする人それぞれの答えがあって、それが面白いしすごく感動する。

 

個性が見えるゲームは神ゲーだよ。

 

ただ、TRPGとかマダミスって進行役(GM)が必要だから、遊ぶハードルが高いのがネックなんだよね……」

「プレイヤー自身の人間性や価値観が透けて見える」という体験は、圧倒的な面白さを生み出します。 「だったら、GM不要でサクッと遊べるボードゲームのシステムの中に、『プレイヤーの個性や価値観が露わになる要素』を組み込めば、最強のゲームになるんじゃないか?」

 

 

ここから、私たちが作るべきゲームの輪郭がハッキリと見え始めました。

「ルールは2048のように極限までシンプルで、Mリーグのように初心者でも楽しめて、カタシロのように遊ぶ人の個性が見えるゲーム」。

これが、私たちが日常エンタメから導き出した「神ゲー」のターゲティングと企画の軸です。

 

【本音】ボドゲの本質は「組み合わせ」。メカニクスを知らずに作って後悔したこと

こうして独自の視点で企画を固め、私たちは手探りでルールを作り上げました。結果として、処女作『マトリョーシカポーカー』はゲームマーケットで見事完売。私たちの仮説は間違っていませんでした。

……しかし、ここで一つだけ、これからボドゲを作るあなたに「知っておかないと絶対に損する本音」をお伝えさせてください。

最高のメンバーたちとああでもない、こうでもないと議論しながらゲームを作っていく過程は、大人の部活動みたいで本当に、めちゃくちゃ楽しかったです。

でも、だからこそ「もっと早くこれを知っていれば、もっとスムーズに面白くできたのに!」と心底悔やんでいることがあります。

 

私たちは大きな勘違いをしていました。

「世の中にあるボードゲームは、すべて天才たちがゼロから生み出した唯一無二のシステムでできている」と思い込んでいたのです。

 

実は、ボードゲームのルールの9割以上は「既存のシステム(メカニクス)の組み合わせ」で出来ています。私たちはその事実を知らず、真っ新な状態から「ルール(車輪)」を再発明しようとして、ものすごい時間を溶かしてしまいました。

「ボドゲの仕組み(メカニクス)について、最初から少しでも知っていれば……!」 私たちが後から痛感した、メカニクスを知っておくべき3つの本当の理由をお伝えします。

 

① 思考と開発の「超ショートカット(車輪の再発明の防止)」

ゼロからルールを考えると、「スタートプレイヤーが有利すぎる」「最後がただの消化試合になる」といったゲーム仕様のバグに必ずぶつかります。先人たちが数十年かけて解決してきた「型(メカニクス)」を知っていれば、そのルールの穴埋めに悩む時間を、自分たちが本当に作りたい「世界観」や「コンポーネントのデザイン」といった楽しい作業に全振りできたのです。

 

② 「バグ(面白くない状態)」の特効薬になる

テストプレイで「誰か一人が独走して、他の人がちょっと退屈そう」となった時。メカニクスを知っていれば、「じゃあ、キャッチアップ(負けている人が有利になる仕組み)を足そう!」と、すぐに対応策の引き出しを開けることができます。

 

③ チーム内での「超・圧縮言語」になる

「自分のコマをこの場所に置いて、そこに書かれているアクションを実行して……」と毎回説明するのは大変です。メカニクスを知っていれば、「ここ、ワーカープレイスメントで行こう!」の一言でチーム内の認識がピタッと揃います。コミュニケーションがめちゃくちゃスムーズになります。

 

「アイデアの種」は日常のエンタメからいくらでも拾えます。 でも、それをゲームとして形にするための「既存のブロック(メカニクス)」を知らないと、私たちのように手探りで膨大な時間をかけることになります。もちろんそれも楽しい思い出ですが、限られた時間の中で最高のゲームを作りたいなら、絶対に知っておいた方がいいです。

もしあなたが今、頭の中にある面白いアイデアをどうやってゲームのルールに落とし込めばいいか悩んでいるなら。先人たちが数十年かけて洗練させてきた「仕組みの型」をカタログとして使えるこの本を、ぜひ手元に置いてみてください。当時の私が知っていたら、間違いなく真っ先に買って、チームのみんなで回し読みしていました。

 

まとめ:日常のエンタメから「神ゲー」の種を見つけ出そう

今回は、ボドゲ制作未経験の素人チームだった私たちが、日常のエンタメから抽出した「売れるゲームの法則」についてお話ししました。

ここまでのポイントを振り返ります。

  • Mリーグのターゲティング: 「ボドゲ好き」だけでなく、キャラクターや会話の魅力をフックに「未経験者」も巻き込む。
  • 2048のシンプルさ: インスト(ルール説明)の壁を壊すため、ルールは極限までシンプルに、戦略は奥深く。
  • カタシロの人間性: 遊ぶ人自身の個性や価値観が透けて見えるゲームは「神ゲー」になる。
  • メカニクスの重要性: ボドゲの本質は「既存ルールの組み合わせ」。先人の知恵(型)を知れば、無駄な苦労をショートカットできる。

「自分には画期的なシステムなんて思いつかない……」と悩む必要はありません。あなたが普段楽しんでいるエンタメの中に、人を熱狂させるヒントは必ず隠されています。

まずは、あなたが最近面白いと感じたコンテンツを振り返り、「なぜ面白かったのか?」を言葉にしてみてください。そこから、あなただけの「神ゲー」の種が見つかるはずです。

 

次回は、この「日常から得た企画の種」を、いかにして具体的なゲームシステム(ルール)へと設計し、テストプレイを通して削ぎ落としていったのか。第3回「ゲームシステムの設計とテストプレイの反復」でお会いしましょう!

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